7月31日、東京ビッグサイトで開催されたGoogle Cloud Next Tokyoに参加してきました。
Google Cloud Next Tokyoは、生成AI、AIエージェント、クラウド、データ活用など、企業のデジタル活用に関する最新動向を学べるイベントでした。公式ページでも、Day 2の基調講演は7月31日に開催され、AIエージェントを安全に動かし続けるためのインフラ、エージェント開発、データ、セキュリティなどがテーマとして紹介されていました。
直接物流をテーマにしたイベントではありませんでした。それでも、物流コンサルティングに関わる立場として、こうしたイベントに足を運ぶ意味は大きいと感じました。
なぜなら、物流の課題は、もはや倉庫や配送だけを見ていても解けないからです。
AI、クラウド、データ活用、業務標準化、セキュリティ、システム連携。これらは一見するとIT部門のテーマに見えますが、今後の物流改善にも確実につながっていきます。
1. 物流に直接関係ない情報こそ、あえて取りに行く
物流業界では、荷待ち時間、配車業務の属人化、倉庫作業の標準化、需要予測、共同配送、物流DXなど、多くの課題があります。
これらの課題は、現場改善だけで解決できるものもあります。ただし、一定以上の改善を進めようとすると、必ずデータ活用やシステムの話になります。
例えば、配車業務の属人化を解消するには、担当者の勘と経験をどのように見える化するかが重要になります。
需要予測を物流に活かすには、販売数量をケース数、パレット数、車両台数、人員計画に変換する必要があります。
倉庫自動化を進めるには、商品マスタ、ロケーション、荷姿、作業手順が整っていなければなりません。
つまり、物流改善でITやAIを活かすには、先に業務ルールや判断基準を整理し、商品マスタ、荷姿、出荷波動、配車条件などのデータを使える状態にしておく必要があります。
AIやクラウドの技術を学ぶ意味は、最新技術をそのまま物流に持ち込むためではなく、自社の物流をどのようなデータ・システム基盤に整えるべきかを考えるためにあります。だからこそ、物流業界のイベントだけを見ていては足りません。直接関係がなさそうな分野にも足を運び、今どのような技術が実用段階に入っているのかを肌で感じておく必要があると、改めて感じました。
2. Day 2 基調講演で感じた「AIを動かし続ける」という視点
今回参加した7月31日は、Day 2にあたりました。
公式ページでは、Day 2基調講演について、AIエージェントの実装が拡大する中で、安全に動かし続けるために必要な基盤を紹介する内容として案内されていました。具体的には、インフラ、エージェント開発、データ、セキュリティを横断し、AIエージェントを「開発・デプロイ・運用・スケール」するための基盤がテーマになっていました。
ここで印象に残ったのは、AIを「作る」ことだけではなく、安全に、継続的に、業務の中で動かし続けるという視点でした。これは物流DXにもそのまま当てはまります。
物流業界でも、WMS、TMS、バース予約、AI配車、需要予測など、さまざまな仕組みが導入されています。しかし、導入して終わりではありません。重要なのは以下のポイントです。
- 現場で使われ続けるか
- データが更新されるか
- 例外処理に対応できるか
- 業務フローとつながっているか
- 責任者が改善を続けられるか
ここが弱いと、どれだけ良いシステムを入れても定着しません。AIも物流DXも、導入そのものより運用設計が問われる段階に入っていると感じました。
3. 小売AIのセッションから考えた、物流とのつながり
公式ブログでは、Day 2の注目セッションとして、イオンリテールの「AIで『探す手間』を『選ぶ楽しさ』へ。実店舗とデジタルが創る1500万人の1 to 1体験」が紹介されていました。
これは小売の顧客体験に関するテーマでしたが、物流の観点でも示唆がありました。顧客一人ひとりに合わせた体験を作るには、裏側で商品、在庫、店舗、配送、データがつながっている必要があります。
これは物流でも同じです。店舗別、納品先別、商品別、時間帯別に条件が違う中で、どこまで最適化できるか。需要予測、在庫配置、店舗配送、センター作業をどうつなげるか。顧客接点の高度化は、最終的には物流の設計にも影響します。
表に見えるのは「便利な購買体験」ですが、裏側では緻密な物流・在庫・データ連携が必要になるはずです。小売のAI活用は、物流にとっても他人事ではないと感じました。
4. 日本テレビのAI活用から考えた「暗黙知」の扱い方
同じく公式ブログでは、日本テレビ放送網の「コンテンツど真ん中を人とAIで創る。日本テレビのAIクリエイティブ戦略」もDay 2の注目セッションとして紹介されていました。
物流とはまったく違う業界の話に見えます。ただ、私が注目したのは、AIが人の仕事を置き換えるというより、人の知見や判断をどう支えるかという点でした。
物流にも、ベテラン担当者の頭の中にしかない判断が多くあります。
- 配車担当者の判断
- 倉庫責任者の人員配置
- 営業担当者が把握している納品先の事情
- 物流会社との交渉感覚
- 現場で起きる例外対応
これらは、すぐにAIへ置き換えられるものではありません。ただし、判断の前提や過去の履歴を整理し、AIが補助できる形にしていくことは可能です。
AI活用の本質は、人を不要にすることではなく、属人化している知見を組織で使える形にしていくことだと感じました。これは、配車業務の属人化や物流DXを考えるうえでも重要な視点です。
5. Expoで感じた「触って理解する」ことの重要性
Google Cloud Next Tokyoでは、基調講演やセッションだけでなく、Expoでも最新のAIやクラウド技術を体験できる構成になっていました。公式ページでも、Expoでは進化したAgentic AIとクラウドをライブ体験でき、国内外の活用事例や最新のGeminiモデルのデモに触れられると紹介されていました。
こうしたイベントで重要なのは、資料を読むだけでは分からない感覚を得られることです。
実際にデモを見る。担当者に質問する。他社が何を課題としているかを聞く。会場全体の熱量を感じる。これらは、オンライン記事や資料だけでは得られません。
物流改善でも同じです。システムのカタログを見るだけでは、本当に使えるかは分かりません。現場に入ってみなければ、どこで詰まっているかは分かりません。担当者と話してみなければ、業務の本当の難しさは見えてきません。
技術を見る場でありながら、改めて「実際に見て、触れて、聞くこと」の重要性も感じました。
6. 物流コンサルとして持ち帰った3つの視点
今回の参加で、物流コンサルとして特に持ち帰った視点は以下の3つです。
- AI活用は目的ではなく、業務改善の手段である
物流でもAI配車、需要予測、倉庫自動化、問い合わせ対応など、さまざまな活用可能性があります。ただし、業務設計が曖昧なままAIを入れても効果は出ません。 - データの整備がすべての前提になる
物流でも、商品マスタ、荷姿、車両条件、納品条件、運賃、作業時間、在庫、出荷波動などのデータが整っていなければ、AIもシステムも機能しません。 - AIエージェント時代ほど、人間側の問いの立て方が重要になる
何を自動化したいのか。何を判断させたいのか。どこまでを人が見て、どこからをAIに任せるのか。この設計が曖昧だと、AIは便利な道具ではなく、使いにくい仕組みになります。
これは物流分野においても、まったく同じことが言えます。
まとめ:現場改善 × データ活用 × AIが未来の物流を創る
Google Cloud Next Tokyoは、直接的には物流イベントではありませんでした。しかし、物流に関わる立場だからこそ、参加する意味があると感じました。
物流は、倉庫や配送だけで完結しません。需要予測、在庫、販売、店舗、顧客接点、システム、AI、データ基盤とつながっています。今回のイベントを通じて感じたのは、物流改善も今後ますます、現場改善 × データ活用 × AI・クラウド技術の組み合わせが重要になるということです。
もちろん、AIやクラウドを使えばすべてが解決するわけではありません。むしろ、業務が整理されていない会社ほど、先にやるべきことは多いです。
物流においても、まずは業務を見える化し、データを整え、判断基準を明確にする。そのうえでAIやクラウドを活用する。今回のイベントへの参加は、その方向性を再確認する良い機会になりました。
物流業界の中だけを見ていては、次の変化に気づくのが遅れます。これからも、直接物流に見えない領域も含めて幅広く情報収集し、物流改善に活かせる視点を取り入れていきたいと思います。
