物流コスト削減の必要性、ドライバー不足、積載率向上などを背景に、共同配送への関心が高まっています。
「同じ方面に運んでいるなら、一緒に運べばよい」「空いているトラックスペースを活用すれば、コストを下げられる」「帰り荷を確保できれば、運行効率が上がる」
考え方としては非常に分かりやすいです。
しかし、実務では共同配送が思ったほど進まないケースも少なくありません。
私自身、味の素物流で幹線輸送を担当していた際、食品メーカー4社の物流担当者と共同物流について協議した経験があります。成立までの道のりは決して簡単ではありませんでしたが、結果として現在のF-LINEにつながる取り組みになりました。
また、ファミリーマート在籍時には、SIP スマート物流サービスにおけるコンビニ共同配送プロジェクトに、ファミリーマート側の窓口として約1年間参画しました。SIPでは、セブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソンの3社によるチェーン横断的な共同配送実証が公表されています。
メーカーの幹線共同物流と、コンビニの店舗共同配送。領域は違いますが、共通して感じたのは、共同配送は「良いことだからやる」だけでは絶対に進まないということです。
本記事では、共同配送が失敗しやすい理由と、成功させるために荷主 連携において整理すべきポイントを、実務目線で解説します。
1. 共同配送は“相手探し”から始めてはいけない
共同配送というと、最初に「どの会社と組むか」を考えがちです。
しかし、実務上はここから始めると失敗しやすくなります。
なぜなら、自社の物流条件が整理されていない状態では、相手先と条件を合わせられないからです。
共同配送を検討する前に、最低限整理すべきことがあります。
- どの方面に運んでいるのか
- 曜日別、時間帯別の物量はどうなっているのか
- 荷姿や温度帯は合うのか
- 納品時間や検品条件に制約はあるのか
- 現在の運賃体系はどうなっているのか
- 費用負担をどう考えるのか
この整理がないまま相手先を探しても、具体的な便設計や費用分担の議論に進めません。
👉 共同配送の第一歩は、相手探しではなく、自社物流の棚卸しです。
2. F-LINEで感じた「総論賛成、各論反対」の難しさ
味の素物流で幹線輸送を担当していた当時、食品メーカー各社との共同物流協議に関わる中で強く感じたのは、共同物流は総論では賛成されやすいが、各論で止まりやすいということです。
トップ同士は、ライバル企業であっても物流は共同でやるべきだという考え方を持っていました。
F-LINEは公式にも、2015年に食品メーカー6社でF-LINEプロジェクトを発足し、2019年に5社共同出資でF-LINE株式会社を設立したと説明されています。また、基本理念として「競争は商品で、物流は共同で」を掲げています。
この理念がブレなかったことは、非常に大きかったと思います。
一方で、現場レベルでは簡単ではありませんでした。
特に難しかったのは、運賃や費用負担の調整です。
- 物量按分にするのか
- 距離按分にするのか
- 車両効率が良い会社と悪い会社でどう調整するのか
- 積載率が下がった場合の負担をどうするのか
- 納品条件が厳しい会社の影響をどう考えるのか
各社とも「共同でやるべき」という方向性には賛成でも、具体的な負担の話になると、それぞれの事情が出てきます。
まさに、総論賛成、各論反対です。
それでも最終的に前に進んだのは、トップ同士が「競争は商品で、物流は共同で」という理念を共有し続けたからだと感じています。
共同配送は、現場の工夫だけでは成立しません。
👉 経営として、なぜ共同でやるのかを決めておくことが必要です。
3. SIPで感じたコンビニ共同物流の難しさ
一方、ファミリーマートで参画したSIP スマート物流サービスのコンビニ共同配送は、メーカー幹線物流とはまた違う難しさがありました。
公表情報では、2020年の実証において、東京都内湾岸エリアの3社の近接店舗に対して、同じトラックで商品の納品を行い、共同化による物流効率化の効果を検証したとされています。具体的には、江東区に共同物流センターを設け、各社の常温配送商品をそれぞれのセンターから横持ちし、チェーン横断的な配送ルートで配送する内容でした。対象はファミリーマート13店舗、セブン‐イレブン13店舗、ローソン14店舗の合計40店舗です。
コンビニ物流の場合、難しいのは単に「同じトラックで運ぶ」ことではありません。
- 各社で商品構成が違う
- 店舗オペレーションが違う
- 納品時間帯が違う
- 検品方法や納品ルールが違う
- センター運用や在庫管理の思想が違う
- 情報システムの持ち方が違う
つまり、配送だけを見ても共同化は成立しません。
SIPの公表資料でも、コンビニやドラッグストアが共同在庫・共同配送を行うには、出荷指示データや在庫データの共有が必要であるとされ、各チェーンとのインターフェイスや物流・商流データ基盤と接続するAPI開発、データ標準化への着手が説明されています。
ここが非常に重要です。
👉 共同配送は、車両やルートの話に見えますが、実際にはデータ連携と業務標準化の話でもあります。
4. 共同配送が失敗しやすい5つの理由
共同輸配送は、理屈としては分かりやすい一方で、実行段階では多くの壁があります。
① 納品条件が合わない
共同配送で最も大きな壁になるのが、納品条件です。
- 納品時間が固定されている
- 午前中指定が多い
- 荷受け側の受付時間が短い
- 納品順に制約がある
- 検品方法が会社ごとに違う
同じエリアに運んでいても、納品条件が合わなければ共同化は難しくなります。
② 物量の波動が大きい
共同配送は、ある程度安定した物量があるほど設計しやすくなります。
逆に、日によって物量が大きく変動する場合、車両の確保が難しくなります。
見るべきなのは月間物量だけではありません。
- 曜日別
- 時間帯別
- 方面別
- 荷姿別
この粒度で見ないと、共同配送に向く便かどうか判断できません。
③ 荷姿・温度帯・取扱条件が合わない
同じ方面でも、一緒に運べる貨物とは限りません。
- パレットかバラか
- 常温か冷蔵か冷凍か
- 重量物か軽量物か
- 破損リスクが高いか
- 積み合わせに制約があるか
共同配送は、方面が同じかどうかだけではなく、一緒に運べる貨物かどうかを見る必要があります。
④ 運賃・費用負担で止まる
共同配送で最も揉めやすいのが、費用負担です。
方向性としては賛成でも、具体的な負担の話になると止まりやすくなります。
- 運賃をどう按分するのか
- 物量按分か、距離按分か
- 積載率が下がった場合は誰が負担するのか
- 納品条件が厳しい会社の影響をどう扱うのか
- 共同化によって得られたメリットをどう分けるのか
ここを曖昧にしたまま進めると、共同配送は長続きしません。
⑤ データ連携・業務標準化ができない
SIPのコンビニ共同配送で特に感じたのは、共同配送はデータと業務をそろえないと成立しにくいということです。
共同在庫や共同配送を進めるには、出荷指示、在庫、納品、検品、店舗別仕分けなどの情報をどう扱うかが重要になります。
SIPの成果報告では、都市エリアのコンビニ共同物流による効果検証として、労働生産性10%上昇、店舗配送トラック数30%削減、積載率10%改善という結果が示されています。また、地方での共同配送についても、センター間共同幹線輸送や店舗への共同配送で距離・時間削減の効果が示されています。
効果は大きい一方で、その前提には、データ連携や業務標準化があります。
共同配送は、単なる配車の工夫ではありません。
👉 企業間で業務とデータをどうつなぐかが問われます。
5. 成功の鍵は「理念」と「実務設計」の両方にある
F-LINEにつながる食品メーカー共同物流と、SIPでのコンビニ共同物流。
この2つの経験から言えるのは、共同配送には2つの要素が必要だということです。
1つ目は、理念です。
なぜ共同でやるのか。何を競争領域とし、何を協調領域とするのか。この考え方がないと、各論で必ず止まります。
2つ目は、実務設計です。
どれだけ理念が正しくても、運賃、費用負担、納品条件、荷姿、データ連携、業務標準化が整理されていなければ、運用は回りません。
つまり、共同配送はトップの方針だけでも足りない、現場の工夫だけでも足りないということです。
👉 経営としての理念と、実務としての設計。この両方が必要になります。
6. 共同配送の前に整理すべきデータ
共同配送を検討する前に、最低限整理しておきたいデータがあります。
- 出荷元・納品先エリア
- 曜日別物量
- 時間帯別物量
- 車両サイズ
- 積載率
- 荷姿
- 温度帯
- 納品条件
- リードタイム
- 納品頻度
- 現在の運賃体系
- 費用負担の考え方
- 出荷指示データ
- 在庫データ
- 検品・納品ルール
最初から完璧なデータをそろえる必要はありません。
まずは、どの便なら共同化の可能性があるかを判断できる粒度で整理することが重要です。
まとめ
共同配送は、物流コスト削減や積載率向上の有効な選択肢です。
しかし、「同じ方面だから一緒に運べる」ほど単純ではありません。
味の素物流での幹線輸送担当として、食品メーカー各社との共同物流協議に関わった経験からは、共同配送は理念がなければ各論で止まると感じました。
一方、ファミリーマートでSIP スマート物流サービスに参画した経験からは、共同配送はデータ連携と業務標準化がなければ実装できないと感じました。
共同配送を成功させるには、まず相手先を探す前に、自社の物流を棚卸しすることが重要です。
見るべきなのは、
- どこへ
- いつ
- どれだけ
- どの荷姿で
- どんな条件で
- いくらで
- どのデータを使って運んでいるか
です。
そして、共同配送は単なる物流施策ではありません。
👉 競争領域と協調領域を切り分け、限られた輸送力をどう使うかを考える経営課題です。
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【参考文献・出典】
・F-LINE株式会社「F-LINEプロジェクト」
・公益財団法人流通経済研究所「大手コンビニ3社の店舗配送における共同配送の実証実験」
・ファミリーマート「コンビニ大手3社による店舗配送における共同配送の実証実験に参加」
・内閣府「SIP第2期 スマート物流サービス 最終評価関連資料」
