配車業務の属人化から抜け出す方法|ベテラン頼みを仕組みに変える

物流現場でよく聞く課題の一つに、配車業務の属人化があります。

「配車はあの人でないと分からない」「ベテラン担当者が休むと業務が止まる」「なぜその車両・その運送会社を使っているのか説明できない」
このような状態になっている企業は少なくありません。

配車は、単に車両を割り当てる業務ではありません。納品時間、車格、積載量、配送順、運賃、ドライバーの拘束時間、荷役条件、得意先ルールなど、複数の条件を同時に判断する業務です。

私自身、味の素物流で幹線輸送を担当し、またファミリーマートで店舗配送に関わる中で、配車や輸配送設計は担当者の経験だけに頼ると限界が来ると感じてきました。Amazonでの経験も含め、物流を安定的に回すには、個人技ではなく、仕組みで判断できる状態を作ることが重要だと考えています。

本記事では、配車業務が属人化する理由と、ベテラン頼みから抜け出し、物流改善を進めるための実務ステップを整理します。

1. 配車業務はなぜ属人化しやすいのか

配車業務が属人化しやすい理由は、判断条件が多いからです。
例えば、配車担当者は日々以下のようなことを考えています。

  • どの車格で行くべきか
  • どの運送会社に依頼するべきか
  • 積載量に無駄はないか
  • 納品時間に間に合うか
  • ドライバーの拘束時間に問題はないか
  • 荷役条件に合っているか
  • 帰り荷を取れる可能性はあるか
  • 急な変更が発生した場合に対応できるか

これらを瞬時に判断しているため、外から見ると「勘と経験」に見えます。
もちろん、ベテラン担当者の経験は重要です。しかし、それが頭の中だけにある状態では、会社として再現できません。

属人化とは、能力が高い人がいること自体ではありません。その人がいないと判断できない状態のことです。

2. 属人化した配車で起きる問題

配車が属人化すると、日々の業務が回っているように見えても、いくつかのリスクが蓄積します。

まず、担当者が休むと業務品質が落ちます。代わりの人が入っても、なぜその運送会社を使うのか、なぜその時間に出すのか、なぜその車格なのかが分からないため、判断が遅れます。

次に、改善ができません。配車理由が説明できないと、どこに無駄があるのか分かりません。

さらに、運送会社との交渉も弱くなります。実績データや判断基準がなければ、運賃交渉や条件見直しが感覚論になってしまいます。

配車業務の属人化は、単なる担当者依存の問題ではありません。

  • コスト改善が進まない
  • 積載率が上がらない
  • 運送会社との交渉材料がない
  • 引き継ぎができない
  • TMSを入れても使いこなせない

こうした問題につながります。

3. まず見える化すべき配車条件

配車を仕組みに変え、配車効率化を図る第一歩は、判断条件を見える化することです。
最初から高度なシステムを入れる必要はありません。まずは、日々の配車判断で見ている条件を棚卸しします。

具体的には、以下のような項目です。

  • 出荷元・納品先・納品時間
  • 車格・物量・荷姿・重量・積載率
  • 運送会社・運賃・荷役条件・待機時間・帰り荷の有無
  • 納品先ごとの注意事項

この情報が整理されていない状態でTMSを導入しても、効果は限定的です。
TMSは便利な道具ですが、判断基準が曖昧なままでは、結局はベテラン担当者がシステムの外で調整することになります。

つまり、配車の仕組み化は、システム導入の前に、判断条件の整理から始めるべきです。

4. 味の素物流で感じた幹線輸送の難しさ

味の素物流で幹線輸送を担当していたとき、強く感じたのは、幹線輸送は単に「A地点からB地点へ運ぶ」だけではないということです。

幹線輸送では、物量、車格、発着時間、積載率、運賃、復路活用、拠点間バランスなど、多くの条件が絡みます。
特に、複数のメーカーや拠点が関わる場合、配車はさらに難しくなります。

  • どの便をまとめられるのか
  • どの物量を同じ車両に乗せられるのか
  • どの時間帯なら無理なく運べるのか
  • 運賃をどう整理するのか
  • 積載効率をどう上げるのか

こうした判断を、担当者の経験だけで回し続けるのは限界があります。
配車の属人化を解消するには、ベテランの判断を否定するのではなく、ベテランが見ている条件を言語化し、他の人でも判断できる状態にすることが重要です。

5. ファミリーマートで感じた店舗配送の難しさ

ファミリーマートで店舗配送に関わる中では、店舗配送特有の難しさも感じました。
店舗配送では、納品時間、店舗オペレーション、商品の特性、温度帯、検品方法などが細かく絡みます。

単純に車両効率だけを追えばよいわけではありません。
例えば、店舗側の受け入れ体制や納品時間を無視して配送効率だけを上げようとすると、店舗運営に負荷がかかります。逆に、店舗都合だけを優先しすぎると、配送効率が落ちます。

つまり、配車は物流部門だけの最適化ではなく、店舗、商品、在庫、配送、運送会社をつなぐ調整業務でもあります。
ここでも重要なのは、配車担当者の経験を仕組みに変えることです。

  • 店舗別の納品条件
  • 曜日別の物量傾向
  • 時間帯別の配送負荷
  • 車両別の積載効率
  • 配送ルートごとの制約

これらを整理することで、配車は個人の勘ではなく、組織として改善できる業務になります。

6. 属人化を解消する実務ステップ

配車業務の属人化を解消するには、段階的に進めることが重要です。

① 現在の配車パターンを棚卸しする

まず、日々の配車を分類します。

  • 定期便・スポット便・緊急便
  • 幹線便・店舗配送・チャーター便・共同配送候補便

どの配車が標準で、どれが例外なのかを分けます。

② 判断条件を言語化する

次に、ベテラン担当者が何を見て判断しているかを整理します。

  • なぜこの運送会社を使うのか
  • なぜこの時間に出すのか
  • なぜこの車格なのか
  • なぜこのルートなのか
  • なぜこの便は他の便とまとめられないのか

ここを言語化すると、配車のブラックボックスが少しずつ解消されます。

③ 標準ルールと例外ルールを分ける

すべてを標準化しようとすると失敗します。
物流には必ず例外があります。
大事なのは、標準で処理できるものと例外判断が必要なものを分けることです。
標準ルールができると、通常業務は安定します。例外だけをベテランが判断すればよくなるため、負荷も下がります。

④ 配車結果をデータで振り返る

配車は、組んで終わりではありません。

  • 積載率はどうだったか
  • 運賃は妥当だったか
  • 待機時間は発生したか
  • 納品遅延はなかったか
  • 空車回送は発生していないか

結果を振り返ることで、次の配車判断が改善されます。

⑤ TMS導入はその後でよい

TMSは、配車業務を効率化する有効なツールです。
しかし、判断条件や配車ルールが整理されていない状態で導入すると、システムに業務を合わせられず、結局使われなくなることがあります。

TMS導入の前に、まずは配車の判断基準を整理する。そのうえで、どの業務をシステム化するのかを決める。
この順番が重要です。

まとめ

配車業務の属人化は、多くの物流現場で起きています。
ただし、属人化しているからといって、ベテラン担当者の経験を否定する必要はありません。
むしろ重要なのは、ベテランが見ている条件を見える化し、組織の判断基準に変えることです。

配車を仕組みに変えるには、まず以下を整理する必要があります。

  • どの便を標準化できるか
  • どの条件で運送会社を選んでいるか
  • どの車格を使うべきか
  • どの納品条件が制約になっているか
  • どこに例外判断が必要か

配車は、勘と経験だけで回す業務ではありません。物流コスト、積載率、納品品質、運送会社との関係に直結する重要な業務です。
まずは、配車担当者の頭の中にある判断を、言葉とデータにすることから始めるべきです。

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出典: 第5号記事 配車業務の属人化から抜け出す方法|ベテラン頼みを仕組みに変える

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