改正物流効率化法への荷主対応において、今後重要になる役割の一つが物流統括管理者です。
物流統括管理者は、一般的にCLOとも呼ばれますが、実務上はまだ十分に理解されていない印象があります。
私自身、これまでAmazon、ファミリーマート、味の素物流(現・F-LINE)などで、輸配送ネットワーク、店舗配送、物流企画、物流改善に関わってきました。その中で強く感じてきたのは、物流の課題は物流部門だけでは解決できない、ということです。
クライアントとの議論の中でも、「物流部門の責任者を置けばよいのか」「法対応の窓口を決めればよいのか」「中長期計画や定期報告を作る担当者のことなのか」といった話になることがあります。
しかし、物流統括管理者は単なる書類作成担当でも、物流部門の窓口でもありません。
本記事では、物流統括管理者の制度上の位置づけを踏まえながら、実際に機能させるために何を設計すべきかを整理します。
1. 物流統括管理者はすべての荷主に必要なのか
まず押さえておくべき点は、物流統括管理者の選任はすべての荷主に一律で求められるものではないということです。
物流効率化法の理解促進ポータルでは、物流統括管理者の選任が義務付けられるのは、特定事業者のうち特定荷主および特定連鎖化事業者とされています。また、物流統括管理者は、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者、つまり重要な経営判断を行う役員等の経営幹部から選任される必要があるとされています。
ここを曖昧にすると、議論が混乱します。
一方で、特定荷主に該当しない企業であっても、物流改善を進めるうえで、「誰が物流を全社横断で見ているのか」という論点は避けて通れません。
つまり、制度上の義務対象かどうかにかかわらず、物流を経営課題として扱う企業には、物流統括管理者的な役割が必要になります。
2. 物流統括管理者は“物流部門の代表”ではない
物流統括管理者について、よくある誤解があります。
それは、「物流部門の責任者を任命すればよい」という考え方です。
もちろん物流部門の知見は重要です。しかし、物流統括管理者に求められるのは、物流部門内の管理だけではありません。
私自身、Amazonでの輸配送ネットワークや、ファミリーマートでの店舗配送、味の素物流(現・F-LINE)での物流企画に関わる中で、物流は常に営業、商品、在庫、調達、システム、現場運営とつながっていると感じてきました。
例えば、荷待ちや荷役時間の問題を掘り下げていくと、原因が物流部門の外にあることは少なくありません。
- 営業が短すぎる納期を前提にしている
- 製造や出荷の締め時間が波動を生んでいる
- 購買条件が納品頻度を増やしている
- 在庫方針が倉庫作業を複雑にしている
- 得意先との納品条件が見直されていない
こうした問題は、物流部門だけでは動かせません。
👉 だからこそ、物流統括管理者は物流部門の代表ではなく、社内を横断して物流を動かす意思決定機能として設計する必要があります。
3. 名ばかりCLOになる企業の特徴
物流統括管理者が機能しない企業には、いくつかの共通点があります。
① 権限がない
役職名だけ付けても、営業・製造・購買・在庫・物流に対して調整権限がなければ、実際には何も変わりません。
物流改善では、部門間の利害がぶつかります。
物流側から見れば改善でも、営業から見ると納品条件の制約になることがあります。倉庫側から見れば作業効率化でも、商品部門や在庫部門から見ると運用変更になることがあります。
👉 この調整を担えないと、物流統括管理者はただの報告窓口になります。
② KPIがない
物流統括管理者が何を改善するのかが曖昧なままでは、活動が形骸化します。
最低限見るべき指標としては、例えば以下があります。
- 荷待ち時間
- 荷役時間
- 積載率
- 配送コスト
- 出荷波動
- 納品頻度
- 誤出荷率
- 人時生産性
クライアントとの議論でも、物流改善の話をしているのに、数値がほとんど出てこないケースがあります。
この状態では、改善したかどうかを判断できません。
👉 CLOが機能するかどうかは、KPIを持っているかで大きく変わります。
③ 会議体がない
物流統括管理者を置いても、関係部門が集まる場がなければ、改善は進みません。
物流の課題は、物流部門だけで完結しません。
営業、商品、製造、購買、在庫、物流、システム、経営層が同じ数字を見て、優先順位を決める場が必要です。
私が実務上重要だと感じるのは、物流会議を単なる報告会にしないことです。
👉 報告だけで終わる会議ではなく、「何をやめるか」「どの条件を変えるか」「どの部門が動くか」まで決める場にしなければなりません。
4. 物流統括管理者が担うべき主な役割
物流統括管理者には、中長期計画や定期報告の作成だけでなく、社内関係部門の連携体制構築、設備投資・デジタル化・物流標準化に向けた計画の作成・実施・評価、社内研修、調達先・納品先・物流事業者との連携などが求められています。物流全体の持続可能な提供に向け、物流機能だけでなく調達・生産・販売等の分野を統合し、社内外の連携を推進する役割も期待されています。
実務的には、次の4つに整理すると分かりやすいです。
① 方針を決める
物流統括管理者は、物流改善の方向性を決める役割を持ちます。
- 荷待ち時間をどこまで減らすのか
- 積載率をどう上げるのか
- 共同配送を検討するのか
- 倉庫作業の標準化を進めるのか
- 物流コストをどの粒度で管理するのか
これらを場当たり的に進めるのではなく、会社としての方針に落とす必要があります。
② 数字を見る
物流は、感覚で語られやすい領域です。
「現場は頑張っている」「運送会社が厳しい」「コストが上がっている」
もちろん、どれも間違いではありません。
しかし、経営判断にするには数字が必要です。
物流統括管理者は、物流を数字で説明できる状態にする必要があります。
③ 他部門を動かす
物流改善の本丸は、部門間調整です。
例えば、納品頻度を減らすには営業の協力が必要です。出荷波動を抑えるには商品・在庫・出荷計画との連携が必要です。荷役時間を短縮するには倉庫作業だけでなく、荷姿や検品ルールの見直しが必要です。
Amazon、ファミリーマート、味の素物流(現・F-LINE)のように、消費者接点や店舗・配送ネットワークを持つ事業では、物流だけを切り離して考えることはできません。商品、販売、在庫、配送、システムが連動して初めて、物流は機能します。
物流統括管理者は、物流部門の代弁者ではなく、会社全体の物流最適化を進める役割です。
④ 外部と連携する
物流は自社だけで完結しません。
運送会社、倉庫会社、納品先、仕入先、共同配送の相手先など、外部との連携が必要です。
特に今後は、共同配送、帰り荷の確保、納品日の集約、リードタイム調整など、社外との協議が増えていきます。
物流統括管理者は、社内だけでなく、社外との調整機能も担う必要があります。
5. 物流改善に向けて最初にやるべき3つのこと
物流統括管理者を機能させるために、最初から完璧な体制を作る必要はありません。
まずは、以下の3つから始めるべきです。
① 権限と役割を明文化する
誰を物流統括管理者にするか以上に、何を決められる人なのかを明確にする必要があります。
- 物流KPIの設定
- 改善テーマの優先順位付け
- 関係部門への改善要請
- 投資判断への関与
- 物流会社との交渉方針の確認
👉 ここが曖昧だと、名ばかりの役職になります。
② 見るべきKPIを決める
最初から大量のKPIを持つ必要はありません。
まずは、
- 荷待ち時間
- 荷役時間
- 積載率
- 物流コスト
- 出荷波動
このあたりから始めるのが現実的です。
👉 重要なのは、数字を集めること自体ではありません。その数字を見て、何を判断するかです。
③ 関係部門を巻き込む場を作る
物流統括管理者が一人で頑張っても、物流は変わりません。
月1回でもよいので、営業・商品・製造・在庫・物流・システムなどが同じ数字を見る場を作る必要があります。
その場では、単に実績を見るだけではなく、
- どの拠点から改善するか
- どの納品条件を見直すか
- どの得意先と協議するか
- どのKPIを次月までに改善するか
まで決めるべきです。
6. 中長期計画を“提出書類”で終わらせない
特定荷主等には、中長期計画書や定期報告書の作成・提出が義務付けられます。物流統括管理者の業務にも、中長期計画や定期報告の作成が含まれています。
ただし、ここで注意すべきなのは、計画を作ることが目的になってはいけないということです。
中長期計画は、提出するための書類ではなく、物流改善を継続するための設計図です。
クライアントとの議論でも、計画書の体裁を整えることに意識が向きすぎて、実際の改善活動とつながっていないケースがあります。
本来は、
- どのKPIを改善するのか
- どの部門が関与するのか
- どの拠点から始めるのか
- いつまでに何を変えるのか
が明確になっている必要があります。
👉 中長期計画は、書類ではなく実行計画として扱うべきです。
まとめ:改正物流効率化法を見据えた荷主対応のステップ
物流統括管理者は、単なる制度対応の役職ではありません。
特定荷主等においては制度上の選任義務がありますが、それ以上に重要なのは、物流を会社全体で改善するための機能として設計することです。
物流統括管理者に必要なのは、
- 物流部門内の管理ではなく、
- 経営判断への関与
- 関係部門の調整
- 物流KPIの管理
- 中長期計画の実行
- 外部関係者との連携です。
私自身、Amazon、ファミリーマート、味の素物流(現・F-LINE)などで物流企画・改善に関わる中で、物流は一部門の努力だけでは変わらないと感じてきました。物流を変えるには、商品、営業、在庫、システム、現場運営、経営判断が同じ方向を向く必要があります。
名ばかりCLOにしないためには、まず以下を決める必要があります。
- 何を決められる人なのか
- どのKPIを見るのか
- どの部門を巻き込むのか
- どの会議体で改善を進めるのか
👉 物流統括管理者は、物流部門の代表ではありません。物流を経営課題として動かすための司令塔です。
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【参考文献・出典】
・国土交通省ほか「物流効率化法」理解促進ポータルサイト
・物流統括管理者(CLO)の選任
・荷主(第一種・第二種)の判断基準等
