荷待ち時間・荷役時間はどう測る?物流効率化法に向けた荷主の実務

荷待ち・荷役時間はどう測る?|改正物流効率化法に対応する実務ステップ

改正物流効率化法への荷主対応において、多くの荷主企業が最初につまずくのが、荷待ち時間・荷役時間をどう測るかという点です。

「荷待ちを減らしましょう」「荷役時間 短縮を図りましょう」

こう言うのは簡単ですが、実際には、どこからどこまでを荷待ち時間と見るのか、荷役作業と附帯業務をどう分けるのか、誰がどのタイミングで記録するのか、といった実務上の論点が多くあります。

私自身、クライアントとの議論の中で、「荷待ち時間は問題になっているが、正確には測れていない」「改善したつもりだが、数字で説明できない」というケースに何度も直面してきました。

本記事では、制度の説明にとどまらず、荷主企業が実際に動かせる形で、荷待ち・荷役時間の考え方と測り方を整理します。

1. 「荷待ちを減らす」だけでは改善にならない

荷待ち・荷役時間の短縮は、改正物流効率化法への対応において重要なテーマです。

ただし、実務で注意すべきなのは、「荷待ちが長いらしい」「ドライバーを待たせているらしい」という感覚だけで改善を始めないことです。

クライアントとの会話でも、よくあるのは次のような状態です。

  • 荷待ちが発生している認識はある
  • 物流会社から指摘は受けている
  • ただし、どの便で、どの時間帯に、何分待たせているかは分からない
  • 受付・バース・荷役・伝票処理のどこで止まっているかも分からない

この状態で改善策を考えても、打ち手がぼやけます。

例えば、同じ「2時間かかっている」でも、受付で止まっているのか、バース待ちなのか、荷役作業が遅いのか、検品・伝票処理で止まっているのかによって、対策はまったく変わります。

つまり、最初にやるべきことは、👉 荷待ちを減らすことではなく、どこで時間が発生しているかを分解すること です。

2. まず「荷待ち時間」と「荷役時間」を分けて考える

荷待ち・荷役時間を測るうえで、まず必要なのは、待っている時間と作業している時間を分けることです。

「物流効率化法」の理解促進ポータルサイトでは、荷待ち時間について、トラックドライバーが集貨・配達場所などで、荷主や施設管理者などの都合により貨物の受渡しのために待機した時間と整理されています。到着時刻や指示時刻の有無によって、どこから算定するかも変わります。

一方、荷役等時間は、トラックドライバーが行う荷積み・荷卸し、検品、荷造り、搬入・搬出、仕分、ラベル貼り、立会いなど、運転業務に附帯する業務に従事した時間とされています。

ここを混ぜてしまうと、改善の方向性を誤ります。

私がクライアントと話していて特に多いと感じるのは、「荷役が遅い」と思っていたが、実際には荷役前の待機が長いというパターンです。

この場合、作業者を増やしても効果は限定的です。見直すべきは、受付方法、バースの使い方、車両の呼び込み順、事前情報の共有かもしれません。

3. 荷主がまず記録すべき5つの時刻

最初から大きなシステムを入れる必要はありません。

まずは、以下の5つの時刻を取るだけでも十分に改善の入口になります。

  • 到着時刻
  • 受付時刻
  • 荷役開始時刻
  • 荷役終了時刻
  • 退出時刻

この5つが取れると、次のことが見えてきます。

  • 到着してから受付までに時間がかかっているのか
  • 受付後にバース待ちが発生しているのか
  • 荷役作業そのものが長いのか
  • 荷役終了後の伝票処理や確認で止まっているのか

私の経験上、ここまで分解すると、原因はかなり絞り込めます。

逆に、ここを取らずに改善しようとすると、「何となくバース予約を入れる」「何となく人を増やす」「何となく物流会社に改善を依頼する」という形になりがちです。

それでは、改善効果を説明できません。

👉 荷待ち改善は、まず“時刻を取ること”から始まります

4. 平均時間だけを見ると判断を誤る

荷待ち・荷役時間を測り始めると、多くの企業がまず平均時間を見ます。

もちろん平均は重要です。ただし、平均だけでは実態を見誤ります。

例えば、平均時間が60分でも、実態としては次のようなケースがあります。

  • 大半の車両は30分以内で終わっている
  • 一部の便だけが180分以上かかっている
  • 特定の曜日だけ長い
  • 午前中の納品だけ極端に混んでいる
  • 特定の商品群や得意先だけ時間がかかっている

この場合、全体を一律に改善するよりも、長時間化している便や時間帯を特定した方が効果的です。

クライアントとの議論でも、平均だけを見ると「それほど悪くない」という結論になりがちです。

しかし、実際には一部の便が大きく足を引っ張っていることがあります。

見るべきポイントは、平均ではなく、 👉 偏り です。

  • 2時間を超えている便はどれか
  • 特定の曜日・時間帯に偏っていないか
  • 特定の拠点・納品先・商品群に偏っていないか
  • 発荷主側と着荷主側のどちらで発生しているか

ここまで見ることで、ようやく改善対象が明確になります。

5. 最初から全拠点でやらない

荷待ち・荷役時間の測定で失敗しやすいのは、最初から全拠点・全便でやろうとすることです。

もちろん、最終的には広く把握できる方が望ましいです。しかし、初期段階から完璧を目指すと、運用負荷が高くなり、続かなくなります。

まずは、次のような拠点に絞って始める方が現実的です。

  • 出荷量が多い拠点
  • 物流会社から待機指摘が多い拠点
  • 納品遅延やクレームが発生しやすい拠点
  • 社内でも課題感が強い拠点

特定事業者の定期報告に関しても、全施設・全運行での計測が難しい場合には、取組の実効性を担保することを前提に、サンプリング等の手法を用いて報告することが許容されています。また、原則として荷待ち時間と荷役等時間は分けて計測するとされています。

重要なのは、 👉 最初から完璧なデータを取ることではなく、改善につながるデータを取り始めること です。

私が支援の場で意識しているのも、まずは小さく始めることです。

1拠点、1週間、主要便だけでも構いません。そこから傾向を見て、必要に応じて対象を広げる方が、運用としては定着しやすくなります。

6. 原因ごとに改善策を分ける

時間を測った後は、原因ごとに改善策を分ける必要があります。

① 受付で滞留している場合

  • 受付方法の簡素化
  • 事前情報の共有
  • 受付順のルール化
  • 車両呼び出し方法の見直し

受付で止まっている場合、荷役作業を速くしても効果は限定的です。むしろ、事前情報の不足や受付手順の複雑さが原因になっていることがあります。

② バース待ちが発生している場合

  • バース予約制の導入
  • 時間帯別の車両集中の平準化
  • 荷積み・荷卸し順の見直し
  • 入構ルールの整理

バースが足りないように見えても、実際には特定時間帯への集中が原因になっているケースもあります。

この場合、設備投資より先に、時間帯の平準化や予約ルールの見直しを検討すべきです。

③ 荷役作業が長い場合

  • パレット化
  • 検品方法の見直し
  • 事前ピッキング
  • 作業標準の整備
  • 荷姿や積付け方法の見直し

この領域は、物流部門だけでは解決できないことが多くあります。

営業、製造、購買、倉庫、配送会社との調整が必要になります。

私がクライアントと話していて感じるのは、物流改善と言いながら、実際には営業条件や出荷指示、製造側の締め時間、納品先ルールが原因になっているケースが多いということです。

👉 荷役時間の短縮は、物流部門だけで完結しない という前提で進める必要があります。

④ 伝票・検品で止まっている場合

  • 伝票情報の事前連携
  • 検品基準の見直し
  • 紙運用の削減
  • 納品ルールの標準化

物流改善というと、どうしても作業スピードに目が行きます。しかし実際には、物は動いているのに、情報処理で車両が止まっているケースも少なくありません。

この場合に必要なのは、作業者を急がせることではなく、情報の流れを整えることです。

7. 荷主側に必要なのは「測る責任」

荷待ち・荷役時間の問題は、物流会社だけの問題ではありません。

荷主側の発注タイミング、出荷指示、納品条件、構内ルール、検品方法、伝票運用などが原因になっていることも多くあります。

だからこそ、荷主企業には 👉 自社の物流を数字で説明する責任 があります。

クライアントとの議論でも、数字を持っている企業と持っていない企業では、改善の進み方がまったく違います。

数字がないと、どうしても会話はこうなります。

  • そんなに待ませていないはず
  • 現場では対応しているはず
  • 物流会社の段取りにも問題があるはず
  • 納品先の都合なので仕方ない

一方で、数字があると議論が変わります。

  • どの便が長いのか
  • どの時間帯に集中しているのか
  • どの拠点から着手するべきか
  • どの部門の協力が必要か

つまり、測ることは単なる法対応ではありません。

👉 改善の優先順位を決めるための土台 👉 物流会社や社内関係者と話すための共通言語 です。

まとめ

荷待ち・荷役時間の短縮は、改正物流効率化法への対応として重要なテーマです。

ただし、単に「荷待ちを減らす」「荷役を短くする」という掛け声だけでは改善は進みません。

まず必要なのは、自社の物流がどこで止まっているのかを、時間で把握することです。

最初に見るべき時刻は、次の5つです。

  • 到着時刻
  • 受付時刻
  • 荷役開始時刻
  • 荷役終了時刻
  • 退出時刻

この5つを取るだけでも、受付で止まっているのか、バースで待っているのか、荷役作業が長いのか、伝票処理で止まっているのかが見えてきます。

そして、平均時間だけで判断せず、長時間化している便や拠点、時間帯の偏りを見ることが重要です。

荷待ち・荷役時間は、測らなければ改善できません。

まずは1拠点・1週間でもよいので、自社の物流を「時間」で見える化することから始めてみてください。

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【参考文献・出典】

・国土交通省ほか「物流効率化法」理解促進ポータルサイト
・「荷待ち時間」と「荷役等時間」の算定方法について
・「定期報告」荷待ち時間等の状況の記載方法について

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